
残念ながら、全てのベンダーが「正しい情報をユーザーに伝えている」訳ではない事を、改めて記しておきます。
ネット上で見かける SAP S/4HANA® 移行サービスでも、担当者の誤解なのか、意図的にミスリードを誘っているのか不明ですが、ユーザー企業の知識不足を狙った感のある記述があったので、これを例に挙げて解説と補足説明を残しておきます。
(ミスリードを誘う記載例1)修正するAdd-On量で単純移行か再構築かを提案します。
(解説1)「少し言葉が足りないだけ」なのかもしれませんが、ユーザー企業側から見れば、判断基準は以下の2点に絞られるはずです。
- 「保守期限が迫っているので、とにかく現状の業務を変えずに、最低限のコストで乗り換えたい」→ 単純移行
- 「DXを見据えて業務を見直す(見直せる従業員が存在する)ので、これまで投資してきたAdd-Onも捨てて、一から業務とシステムを見直したい」→ 再構築
(ミスリードを誘う記載例2)Add-Onはバージョンアップの弊害になる場合があるため、なるべく標準機能の利用をお勧めします。
(解説2)SAP®は2通りの拡張方法を提示しています。一つ目は従来のAdd-On開発等でお馴染みの「In-App 拡張」です。二つ目は、SAP®以外のクラウドサービスやシステムとの連携機能や、不足する機能をSAP® Cloud Platformで開発する「Side-by-Side 拡張」です。SAP®のメッセージを纏めると以下の2点に集約されます。
- 従来のAdd-On(In-App 拡張)はECCのバージョンアップ時、検証コスト増となる可能性があるので、影響を見極めて、必要であれば Side-by-Side 拡張で移管して下さい。
- 新たにAdd-Onする場合は Side-by-Side 拡張で実装して下さい。ECCのバージョンアップによる影響はありません。(標準機能の利用を強く勧めている訳ではない)
(ミスリードを誘う記載例3)SAP S/4HANA® はクラウド時代の設計で、SAP®のクラウド製品との連携が容易です。
(解説3)❝ SAP S/4HANA® はインメモリデータベースであるHANAの能力を最大限に発揮できるような設計になっている ❞ が正しい伝達の仕方でしょうか。SAP®のクラウド製品との連携が容易である事に間違いはありませんが、他社のクラウドサービスとの連携アダプタも、世界中のパートナーが開発し販売していますので、❝ 他のクラウドサービス連携も容易です ❞ が正しい情報です。
いかがでしょうか。ベンダーからの提案が「ベンダー都合の提案」なのか、「ユーザー企業の目線に立った提案」なのか、こうやって見ると、とても分かりやすい例だと思います。
ベンダー選定の一助となれば幸いです。